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楽理一般がメイン、一応。とはいえ書いているヤツは素人ですので、誤解・勘違い・間違いも多いかと思います。色々教えてください!
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こちらのノートです。


今回から「ドミナント」スケールを扱います。


ホールズワースの議論に触れる前に、一般的に言う「ドミナント」の意味を確認しておきます。

オイラの認識では、メジャー・スケールを階名で呼び表すとき(よって音名は任意)、ドの音が「トニック」、ファの音が「サブドミナント」、ソの音が「ドミナント」です。ドから上行で数えて5番目に当たるソが「ドミナント」となるのに対して、やはりドから下行で数えて5番目に当たるファが「サブドミナント」となります。

このため、「トニック」「ドミナント」「サブドミナント」と言った用語は、シングル・ノートに対する特殊な命名で、日本語ではそれぞれ「主音」「属音」「下属音」と訳されます。では、他に同様の名前がついた音はないのか? と言えば、あるんですが(上主音、上中音、下中音)、ほとんど使われません(少なくともオイラの周りでは)。また、ウィキペディアを見ても、使われないとされていますね。あと、ウィキペディアでは「導音」もこの類のシングル・ノートの特殊な名称として扱っています。

ところが、ポピュラーの慣習では、このような用語はシングル・ノートの特殊な名前と言うよりは、むしろ機能和声に基づくコードの名前として用いられます。ですから、端的に「トニック」と言った場合は、別にド(飽くまで階名)を表すわけではなく、トニック・コードの機能を果たすコードを表します。

機能和声は、元々はメジャー・スケール(ダイアトニック・スケールをドから並べたもの)を前提としていたものなのですが(とオイラは理解しています)、これをマイナー・スケールにも敷衍する都合、階名では色々と不便が出てきます。それこそ、シングル・ノートとしてのトニックが、メジャーだとドなのに、マイナーだとラというのは面倒、トニックならトニックと同定したい、と言うわけです。ここから、ナッシュビル・ナンバー・システムが流用されまして(あるいは、機能和声を他のスケールに敷衍する「ために」考案されたのかなぁ?)、スケールの種類に関わらず、トニックはⅠ、サブドミナントはⅣ、ドミナントはⅤと、ローマ数字で表記されます。また、このローマ数字が大文字だとコード(ただし、何声重なっているかは限定されないようです)、小文字だとシングル・ノートを表すようです。この意味では、音名の違いを階名で抽象化し、階名の違いをローマ数字で抽象化する、と言えるかもしれません。

なお、メジャー・スケールのトニックをド、マイナー・スケールのトニックをラと読む階名を「移動ド」、メジャー、マイナーいずれのスケールでもトニックをドと読む階名を「機能ド」、ドレミを飽くまでイタリア語音名として扱う場合を「固定ド」と言うようです。オイラは小中学校の義務教育で、階名として移動ドを習い、音名は日本語のハニホで言い表していたので、他の多くの人もそうしていると信じて疑っていなかったのですが、趣味で自分がポピュラー系の音楽に触れてみると、階名(移動ド)を使う場面に相当長い間接する機会がありませんでした(音名は英米式で、ハニホなんて聞いたことがありません)。ところが、オイラより年長の女性キーボーディストがいきなり「ドレミ」を使って音を指定したことから、オイラは階名だと思い、とっさに調が分からなかったため(今もって調の判定はとっさには出来ません)、「すみません、音名で言ってください」と頼んだものの、「だから『ミ』」と依然「ドレミ」が帰ってきたときには、すみません、正直その女性がバカだと思いました(^◇^;) その後東川清一の諸著作を読んで、クラシック、ポピュラー共に「固定ド」が多数派であることを知って、非常に驚いたものです。おいらは東川のように理論的立場として移動ドを支持する気はありませんが(それほど理論を突き詰めてもいないので、理論的立場など主張できるはずがない)、小学校以来6歳の頃から移動ドを使ってきてそれが当たり前だと思っているため、慣習的に移動ドを支持します。ポピュラーを前提に考えるにも、「ドレミ」は階名、「CDE」は音名、「ⅠⅡⅢ」は音度と、きれいに記号が棲み分けられているにもかかわらず、固定ド等という階名とも音名とも付かない紛らわしい語法を使う必然性やメリットがオイラにはさっぱり理解できません。モードも階名を使ってどの音から並べるか? を考えた方がずっと分かりやすいですし。だからこそ、東川があそこまで移動ドを擁護しなければならないほど固定ドが普及した理由がさっぱり分からないです、ホント。──と、蛇足が過ぎましたね。

このようなわけで、「ドミナント」という言葉は、今日では一般にⅤのコードを表します。そしてこのコードは、ポピュラーが前提とする4声のコードでは、いわゆる「ドミナント・セブンス・コード」となります。というのは、ソ(飽くまで階名、音名は任意)から三度堆積で4音重ねると、ソシレファとなるからです。ソシレと3声だけ重ねたトライアドはメジャーなのに、ファまで4声重ねると7thのファがソからみてマイナーになる、という構造です。

ちなみに、恐らく一般的には、このドミナント・セブンスが指定されている箇所で使えるとされるコード・スケール(別名アヴェイラブル・ノート・スケール)は、ミクソリディアンだと思います。なんのことはない、ダイアトニック・スケールをソから並べたものがミクソリディアンですからね。

一般的に「ドミナント」という言葉が使われる場合は、このくらいの話を思い出せば良いかと思います。

これを踏まえて、ホールズワースが言う「『ドミナント』・スケール」と、そこから取り出せるコードについて、見ていきましょう。

結論から言うと、ホールズワースが言う「『ドミナント』・スケール」の外延は、上で述べたドミナント・セブンスに使えるコード・スケールであるミクソリディアンと一致します。その意味では、別に特別なことは述べていません。

ただし、内包については微妙です。むしろ、ホールズワースの説明は破綻しているとしか思えません。

ミクソリディアンは、ダイアトニック・スケール、それもメジャー・スケールを前提としたときに、それをトニックから上行で数えて5番目に当たるソから並べたものです。こう説明するとヤヤコシイですが、要は「ソラシドレミファ」です。

では、マイナー・スケールを同様に5番目から並べればどうなるでしょう? ナチュラル・マイナー・スケールはラから並べますので、このラから上行で数えて5番目の音は、ミです。このミから並べた「ミファソラシドレ」は、フリジアンです。ですが、ホールズワースがドミナント・スケールとするものは、外延としてはミクソリディアンだけなのです。なぜフリジアンを除外するのかについて、ホールズワースは全く説明していません。

こういった点を、実際に"Melody Chords for Guitar"の記述を見ながら確認しましょう(p.46)。
 

The dominant scale in any key commences on the fifth scale-note of the key and takes its name from that of the fifth scale-note just mentioned.  The keynote is commonly refered to as the "tonic" while the fifth note of the scale is known as the "dominant" or "V" note.

keyという概念がいかに不明瞭なものなのかがよく分かる記述です。訳しておきます。

ドミナント・スケールはどのキーにおいても、そのキーの第5音から始まり、その第5音から命名される。キーノートは一般に「トニック」と称されるのに対して、スケールの第5音は「ドミナント」ないし「Ⅴ」音として知られている。
 
一般に、キーとはダイアトニック・スケールを指すわけですが、key signatureとの関わりから、調号だけでは平行調のうちいずれのスケールなのかを特定できないという問題があることから、本来は階名のドが相当する音名を示す概念です。他方、ホールズワースは独自の意味で用いてきています。

詳しくは過去記事をご確認頂きたいのですが、ホールズワースはthe keys indicated by the chord symbols(コード・シンボルが示すキー)との言い方をしていることから、一般的な意味での、調号(key signature)が示すキーとは別な意味で、「キー」という言葉を使っています。

これと合わせて上で原文を引用したドミナント・スケールに関する記述を見ると、結局ホールズワースが言うキーとは何なのかがますます分からなくなります。とりあえずホールズワースが、そのくらい曖昧に言葉を使っているということを踏まえて、上の記述を確認します。言っていること自体は至極シンプルです。

恐らく、コード・ネームと調号から「コード・スケール」を取り出すという、ごく一般的な作業を暗黙のうちに前提とした上で、コード・ネームのルートをトニックとするスケールを想定し、そのスケールのルートから上行で数えた第5音から、元のスケールを並べ替えたものを「ドミナント・スケール」と定義する、という程度の話なんだろうと思います。ともかく、ここでのポイントは、スケールについて長短の指定をしていないことです。

ホールズワースの説明を更に見てみましょう。(p.46)

Both tonic and dominant scales are in accordance with th key signature for the tonic, or root note, the only difference between the two scales is in the numbering of the note, viz., those in the scale of the tonic are numbered as counting from the tonic, (called number one), while those in the scale of the dominant are numbered as counted from the dominat, (also called number one in the scale ascending from it).  Thus, D the fifthe note of key G major and G minor is the first, (or root), note of the dominant scale in these two keys.

訳してみます。

二つのトニック及びドミナント・スケールは、トニックないしルートに対する調号に従う。二つのスケールの差異は、数え方にのみ存する。すなわち、トニックのスケールの場合、トニックから(1と呼んで)数えられるのに対して、ドミナントのスケールはドミナントから(やはり1と呼んで、ドミナントからスケールを上行して)数えられる。よって、キーGメジャー及びGマイナーの第5音であるDが、これら二つのキーにおけるドミナント・スケールの第1(ないし根)音なのである。

トニックとルートが「ないし(or)」で並べられてしまうのは厄介です。ルートの訳語は「根音」であり、飽くまでコードに関する概念であって、スケールに関する概念ではないからです。そういう意味で、今度はrootが特殊な意味で使われているようですが、ここでは追及せずにおきましょう。

先にも述べたように、階名で考えた場合(よって音名は任意)、メジャー・スケールのトニックはド、マイナー・スケールのトニックはラです。それぞれのトニックから数えた第5音は、それぞれソとミです。ソを「1と呼んで」スケールを上行すれば、7まで数えればソラシドレミファと並び、ミクソリディアンを含意するのに対して、ミを「1と呼んで」スケールを上行すれば、7まで数えればミファソラシドレとなり、フリジアンを含意します。

なぜこんな話をするのかというと、Thus以下で述べられているのが同主調の話だからです。平行調ではありません。同主調のトニックから数えて5番目の音は、長短どちらの場合も完全5度ですから、第5音の音名も同一です。ですから、Gメジャー・スケール、Gマイナー・スケール、どちらにとっても、ドミナント(シングル・ノートとしての)は確かにDです。ですが、そのDから並べられるスケールは、それぞれDミクソリディアンとDフリジアンとなってしまうのです。

にもかかわらず、ホールズワースは、Dミクソリディアンのみをドミナント・スケールとして紹介しています。

もちろん、Gマイナー・スケールをハーモニック・マイナーとすれば、bⅶがⅶとなり、FはF#となります。このため、ミ(D)の上に構成される4声コードはD7となり、これはGメジャー・スケールのソ(D)の上に構成される4声コードのD7と合致します。

ですが、ハーモニック・マイナーの並べ替えは飽くまでフリジアンの変形、ミファソ#ラシドレとなるだけで、決してミクソリディアンにはなりません。

こうしたことから、ホールズワースが考える「ドミナント・スケール」の内包は、正直理解に苦しみます。理屈がどうあれ、少なくとも外延としてホールズワースが考えているのは、ミクソリディアンです。

また、これまでGメジャー・スケール、Gマイナー・スケールを取り上げてきたことから、ホールズワースがドミナント・スケールの説明に使うスケールは、Gから見たP5であるDを〈トーナル・センター〉とするDミクソリディアンです。

ともかく、このような訳でホールズワースの説明は破綻しているように思われるのですが、「こう解釈すれば不都合は生じない」等のご意見ありましたら、コメントにお寄せください。

次回は、Dミクソリディアンの指板の図を提示します。


今回はここまで。
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音楽(素人レベル)
自己紹介:
一応趣味でベースを弾く。

……けど、だれだっていいじゃん、オイラなんか!


◎音楽関係のプロフィール
・ベース歴: 15年以上
・譜面の読み書き: 不自由
・初見演奏: 無理
・利用譜面エディタ: Allegro 2007→Finale 2010
・利用DTMソフト: Music Creator 2

※楽理関係を扱ったことを書いていますが、上記のように音楽については素人です。書かれている内容を鵜呑みにされないよう、ご注意ください。
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