正直言って、ホールズワースの英文は、少なくともオイラにはかなり読みにくいので、純粋に英文解釈のレベルで誤解していないか自分自身心配なのですが、まぁ、見ていきます。今回は、もしかするとホールズワース独自の用語ではないか? というものを見ていきます。
この言葉自体は、むしろ「導音」に相当する一般的なものなのですが、文脈から察するに、ホールズワースは「導音」の意味ではこの言葉を使っていないように思われます。
導音の外延としては、学者によって異なるようですが、内包については、トニックへ解決する音と一般には解釈されるようですし、外延についても、通常はピッチクラスでトニックの半音下の音と了解されるようです。ただ、濱瀬元彦は『ベースラインブック』で導音の外延をもっと広げています。
対して、ホールズワースはleading noteの内包自体を「導音」とは全く異なるものとしているようです。次のように定義しています(p.6)。
the "leading note" of a chord - (I.E., the top note) - occurs in the scale when the latter is played from the open position to the highest convenient position, (fret), on the same string.
訳してみます。
コードの「リーディング・ノート」──(すなわちトップ・ノート)──が同じスケールで生じるのは、続く楽音が、同じ弦上のオープン・ポジションから最も高く都合の良いポジション(フレット)でプレイされる場合である。
済みません、先日までI.E.を「たとえば」と訳していたため、これがリーディング・ノートの定義であることに気づいていませんでした。いずれにしても、上の訳文では分かりにくいですね。かみ砕いていきましょう。
コードのトップ・ノートをリーディグ・ノートと定義しているのですが、その性質・性格について、最初にプレイされたトップ・ノートを奏でる際に使われた弦と、同じ弦で、続くリーディング・ノートも奏でられる、と言うわけです。まだヤヤコシイ言い方ですね。とにかく、リーディグ・ノートは同じ弦でプレイされる、と言うことです。あるコードから別なコードに移るとき、リーディング・ノートとなる各コードのトップ・ノートは、同じ弦でプレイされる、と言うわけです。しかも、そうしたリーディング・ノートは、同じスケールから取り出されると言います。
これって、要するにメロディのことを言っているのでは? って気がしますが、転調とかはどうなるんでしょう?
ポジション自体は一般的に使われますが、少なくともオイラは明確な定義を見たことがありません。ただ、慣習的には左手(ネックを握る手)で押さえることが出来る〈範囲〉を「ポジション」と呼んでいるような気がします。対して、ホールズワースが言う「ポジション」とは、要はフレット番号と弦とで示される座標のことのようです。たとえば、次のような言い回しが出てきます(p.9)。
どのキーでもコード・シェイプを形作るには、まずルート・ポジションを見つけ、その周囲にコード・シェイプを作る。
つまり、ルートを何弦何フレットで押さえるのかを確認してから、そこを基準に適切な左手のフォームを整えろ、という話ですね。ですから、押さえるべき場所を「ポジション」と呼び表すようです。
なお、上での言葉遣いから、「コード・シェイプ」とは、日本のカタカナ語で言う「コード・フォーム」を指すことも分かると思います。コード・シェイプに 従って具体的に指をポジションに置くことを、「formする」と言うようです。これが英語圏でのギター関係の慣用的な言い回しなのか、ホールズワース独自 のものなのかは、オイラには判断付きかねますが、このノートではホールズワースに従って「コード・シェイプ」としておきます。
さて、ホールズワースは更に「セクション」という言葉を導入しています。これは、本文では積極的に使ってはいませんが、図には明確に示しています。
セクションはAからEの5箇所あり、それぞれ次の範囲を指します。
A: 0-3フレット
B: 3-5フレット
C: 5-8フレット
D: 8-10フレット
E: 10-12フレット
各セクションの境界は、隣り合ったセクションに共有されている点に注意してください。たとえば、3フレットはAセクションとBセクションのどちらにも属しています。
12フレットより上はA-Eのそれぞれの範囲に12足して考えます。たとえば、12-15フレットの範囲は[A]という具合に、上の「セクション」を示す文字をカッコで括って示します。
こうしてみると、セクションとは要するに、ポジションマークに挟まれた領域を指すようですね。
「基礎音」と訳して良いのかどうか。ともかく、一般的に言えば「トニック」のことです。"Just for the Curious"で確認したように、ホールズワース自身はスケールに始まりや終わりとなるトニックを認めていないのですが、"Melody Chords for Guitar"では調号との関わりで(よってダイアトニック・スケールを土台に)スケールを捉え、トニックのことをfundamental noteと呼び表します。そして、ダイアトニック・スケールのfundamnetal noteを「1」として、スケール・ノートに7まで番号を振る、という、極めて一般的なことをします。ただ、ローマ数字を使わず、アラビア数字を使っています。
なお、この番号付けは、前回確認したように、"Melody Chord for Guitar"の読者に楽理の前提知識を要求していないことからなされているインターバルの説明に必要なことから行っています。インターバルについては一般的に使われているのと同じです。
いわゆる「トライアド」のことですので、このノートでは「トライアド」と言っておきます。一般的な用語のようですが、commonには「共通の」といった意味合いがあるので、個人的にはトライアドの意味で使われるよりも、異なるキーから構成しうる同じコードのことを言う気がします(ちなみに、この意味でのコードは「ピボット・コード」とも言いますね)。こちらの意味で誤解されることを防ぐため、このノートではcommon chordの用語は使わず、「トライアド」で統一しておきます。
一応alteredについてありきたりな説明がなされているのですが、"Just for the Curious"で確認したように、ホールズワースにとってコードはスケールの一部に過ぎません。ですから、スケール・ノートがalteredしない限り、そのような音を含むコードも出てこないようで、ザッと見た限り、オルタード・テンションの話は出てこないようです。飽くまで、ダイアトニック・スケールのスケール・ノートがオルタードした際、そのようなスケールからコードが取り出されると考えるようで、飽くまでコード・ノートはスケールに整合的であり、スケール・ノートから外れてコード・ノートがオルタードすることはない、と考えるのだと思います。
ただ、マイナー・スケールにおけるオルタード・スケール・ノートについては次のように注意を促しています。m3, m6, m7はメロディック・マイナー・スケールの下行時のactual scale notesなのに対して、M6, M7は上行時のactual scale notesなので、マイナー・スケールにおけるオルタード・スケール・ノートは#4(=b5)、まれにm9(=m2)、この2種類しかない、と。
ここで気になるのはactual scale noteです。文脈から意味は分かりますが、一般的な楽理用語なのか、ホールズワース独自の用語なのかがはっきりしないこと。また、m9の処遇です。ここは、オイラが一般的な楽理に疎いのでピンと来ないだけなのですが、幸い"Melody Chord for Guitar"は楽理の知識を前提にしていないので、とりあえずこう言うものと受け入れておきましょう。
ホールズワースはこんなことを述べています(p.8)。一般的な楽理に関わる注釈です。
・トライアドに2度を加えるときは、常に複音程の「9」で表す。(→sus2を認めない??)
・同様に、4度は「11」で表す。(→sus4を認めない??)
・増6度は決して使わない。m7と外延が一致するから。
と言うわけで、次回からは指板の図も交えて見ていきます。