作業仮設として G min. とみなしているので、へ音部(ベース)、ト音部(ボーカル)どちらも最初の音が G なのは好都合です。
ベースの1小節目は G、続いて全音(長2度)下、転回すると短7度上の F。2小節目は完全4度下、転回して完全5度上の D です。F は短7度を示していますが、これだけではドミナント・セブンスなどの可能性も残るので、コード・クォリティを明確に示しているとは言えません。マイナー系を暗示しつつも、明確にマイナー・スケールから取り出されていることを示すには至っていないようです。
ボーカルだけ見ると8部音符のアウフタクトになっています。「らーあめんたー」までは G と F しか使っていないため、G をコードのルート、かつ、少なくともトーナル・センターとみなすにしてもコードの長短を確定するには材料がまだ少ないですね。「べたい」の箇所でようやく音が追加されます。Bb と C で、Bb は G の短3度、C は完全4度です。
P1
|
m2
|
M2
|
m3
|
M3
|
P4
|
b5
|
P5
|
#5/m6
|
M6/dim7
|
m7
|
M7
|
Ⅰ
|
bⅡ
|
Ⅱ
|
bⅢ
|
Ⅲ
|
Ⅳ
|
#Ⅳ
|
Ⅴ
|
bⅥ
|
Ⅵ
|
bⅦ
|
Ⅶ
|
G
|
Ab
|
A
|
Bb
|
B
|
C
|
C#
|
D
|
Eb
|
( E )
|
F
|
( F# )
|
○
|
|
|
○
|
|
○
|
|
○
|
|
|
○
|
|
|
b9
|
9
|
#9
|
b11
|
11
|
#11
|
|
b13
|
13
|
#13
|
|
というわけで、単純にここからコードを構成しようとすると、Gm7 に 4 ないし 11 の C が加わっていることになります。
あるいは、Bb をテンションと捉えるなら#9となるので、G7sus4に#9が加わったと見るか。
ただ、例え作業仮説だとしても、曲全体を G min. で考えているので、Gm7 の表記は残したいというのがホンネ。
ちなみに、音程計算で解析したところ、ありうるコード・ネームとして次の3つが提示されました。
-
Bb
/G
-
Bbadd2/G
-
C9sus4/G
ボーカルはそれこそアドリブでかなり自由に音が選ばれているので、コード・ノートとして固定的に捉えるのもどうか? という疑問はあります。コード・ネームを確定するには手がかりがやはり少ないのかもしれません。それでもスケールを判定する上では、G をトーナル・センターと考えた場合、長短が分かれる3度と7度がどちらもマイナーなので、マイナー系と捉えて良さそうです。他方、短7度はベースが先に提示し、この段階ではドミナント・セブンスの可能性を残しておき、短3度はボーカルが後から提示することで、ようやくスケールがマイナー系と言える状態が整います。このため、もしかするとアレンジの段階で意図的にスケールが曖昧になるよう工夫した結果、こうなっているのかもしれません。
また、G と F の音使いは、ベースに引き続いてボーカルも踏襲することから、ある種輪唱のような効果を示します。
ベースはさらに下行し、G の完全4度下の D を奏でます。ボーカルは上行し、最後は完全5度上の C です。つまり、G から見て上下5度の音を、上下入れ替えて使っていることになります。G をトニックとみなしてよいなら、ドミナントを下に、サブドミナントを上に配置していることになります。むしろ、そのような音使いだからこそ、G をトニックとみなしたくなります。その意味では、スケールの長短は曖昧にしつつも(少なくともすぐには分からないようにしつつも)、トニックがG であることは明確にしている、と言えそうです。
ベース、ボーカルどちらも G を最初に奏で、ベースは最後に D、ボーカルは最後に C を奏でます。最初に奏でられた G のイメージを残し、上下完全5度を奏でるわけですから、響きとして濁る要素がないといえそうです。他方、その濁りのない音へ進む途中で、ベースは G から見た短7度の F を、ボーカルは短3度の Bb を、それぞれ分担して奏でます。しかも、ベースは下行を維持し、ボーカルは一旦は下行の気配を示しつつも、結局 G から上行を維持します。長短に分かれる音は、この様な上行ないし下行の流れの中で経過音的に登場するため、聞く側に与える印象は希薄です。このため、スケールとしての長短を示す手がかりは残しているのですが、やはりむしろ残しつつもあえてぼかしているように思えます。